Home in Kamakurayama
design : Youki Higa
contract : Takaharu Oka Team a.o.
iron works : Isaku Nagahama + Atelier Saito
dining table : Kazumasa Noji + Studio Truss
kitchen : Rustic Twenty Seven
old wood : Red Barn
choice wood : Enomoto Meiboku
fusuma paper : Kamisoe
flower vase wall : Keiichi Tanaka
paper architecture : Tomoko Fuse
photo : Tae Nakayama
principal use : private house
total floor area : 123m2
building site : Kamakurayama
completion date : 2019
cl : -
建物は築25年程度の中古建売住宅、木造枠組壁構(2x4)の2階建住居である。立地は鎌倉山中腹の傾斜地にある閑静な小規模造成地の1画に位置する。計画はまずエントランスのある2階の諸設備改修及び意匠変更を基本として進められた。エントランスはドアの改修都合に併せて私道からの高低差を解消し、通路までなだらかなスロープとした。タイルには部分的にガラスを嵌め込み、暗い1Fパウダールームのトップライトとしている。階段ホールは開放的な天高を活かすため、既存の袖壁を解体しスチール製の手摺りを取り付けた。既存のルーバー窓はFIXに変更し、施主の元家にあったステンドグラスを移設した。通路天井入隅には50Rの面木を採用し壁と天井の境界を曖昧にした。リビング|ダイニングの間仕切り壁は、施主の生活用途を考慮し、明確なシーンの切り替えを促すよう既存壁の約4倍厚となる分厚いフカシ壁と躙り口的な小さなRトンネルを設けた。その壁厚を活かし、ダイニング側へはいくつかの不定形ニッチと収納機能を与え、キャットウォークも兼ねたアクセントウォールとした。フローリング工事においては、大工のアドバイスと助けを借りつつ、施主とその仲間(老若男女)たちとで自主施工した。長さ10cmにカットした1.4cm角の工作棒材は、1ピース1ピース手作業で面取りしたものである。作業には約1ヶ月の時間を要し、この気の遠くなる作業のために加工した木片フローリングの総数は約2万5千個に及んだ。フローリング下には床暖房を敷設した。
2F工事が中盤に差し掛かるころ、1Fの改修内容もまとまり2期工事として着工する。既存トイレ|パウダールームの間仕切壁は解体し、洗面・収納の諸機能と併せて外部にあったランドリー置場も確保することでワンルーム化に成功した。廊下の収納建具は1F同様、目透し建具とし、既存建具も同じルールに沿ってペンキ仕上げで計画に調和させた。1Fに3室ある洋室の改修は、2室は床壁天の化粧直しに留め、北側に位置する小さな洋室を和室に改修した。和室入口の上がり框は伊豆下田で手に入れた欅3尺大黒柱の古材である。これを縁側と見立て、隣接する南側洋室の間仕切り壁に新設した木製1本引戸を開け放つと、洋室は外部と和室を繋ぐ位相空間へと変化する。洋室との境界でもあるこの1本引戸は、閉めることで廊下から和室までの専用アプローチ通路、位相をつくるコンバインド仕様である。
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後悔しない家づくりをしたい。施主にとって二度目の家づくりは、計画から引き渡しまで約8カ月に及んだ。後悔しないために、施主には家づくりの当事者として、材料の発注から自主施工に始まり、施工に関わる職人達とのコミュニケーション、計画図面では見えることのない問題と課題を孕んだ「ものづくりの現場」に参加していただくことに可能性を感じていた。私は、成果物だけがデザイナーの仕事ではないと考えている。
『終わらない仕事はない。』先の見えない木片フローリングを施工中、ある職人が呟いた話が印象に残った。晴れて竣工を迎え、現場から家に変わる時、『終わらない仕事』が始まると思った。家は家主が育て、守るものである。無垢材は磨けば磨くほど光る。不特定の「人」のためにつくられたハウスには、それが不足していると思う。ホームは自分でつくるものである。この家は今後、どのように変わってゆくのか。竣工写真は真っ白なキャンバスみたいなものだから。